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明治鬼恋慕
第2章 落方村

倒れているのは少年。…正確には、男女の判別はつかないけれど男の服装( ナリ )をしている。
ただ村人でない事は先ず明らかだった。
“ あの服装…っ…武士だよな? それに…腰に刀 ”
駆け寄った焔来が橋まで追い付くと、仔犬はこちらに戻ってきた。
百姓が着るような、継ぎはぎだらけの麻の着物ではない。袴( ハカマ )姿のその子供は、腕と背中から血を流して動かない。
さらに腰にさげた黒い鞘( サヤ )は、彼が帯刀を許された身分であると示していた。
“ 生きてるのか? でも…あの傷じゃあ… ”
負傷した浪人というのは珍しい光景ではない。
このご時世だ。
そう言えば十日ほど前にも、京の池田屋という見世で殺傷事件が起きたらしい…。

