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明治鬼恋慕
第9章 紅粉屋
この騒ぎでは、表から堂々と出るのが難しい。
新しく手にいれた着物をうえから着こんで、格子窓を開けたリュウは焔来を手招いた。
「ここから外に出て屋根づたいに逃げよう」
「そうするしか…ないな、ハァ。…ん? この金はなんだ?」
「着物の代金だよ。盗人あつかいは癪( シャク )だからね」
「そりゃあそうか」
巾着から出した銭を律儀に部屋に残し、二人は腰をかがめて格子窓から屋根の上へと滑り出た。
黒い瓦屋根に慎重に足をつき、互いに目配せをした二人は人だかりから遠ざかる方向に隣の屋根に飛び移る。
そうやって屋根へ屋根へと移動する様は、まるで忍のごとく軽快であった。