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明治鬼恋慕
第2章 落方村
…と、呑気に観察している場合ではない。
「おい、お前!」
戻ってきた仔犬を飛び越え、焔来は倒れた少年のもとへ走った。
藁草履をはいた足が橋の上を蹴飛ばし、木材がギシギシときしむ。
…その振動が伝わったのか
頭の横に投げ出された少年の指が、僅かに反応を示した。
“ 良かった、生きてるのか ”
安堵した焔来に応えるように、血を流す彼は拳を握り、肘で支えて…なんとか顔を上げる。
「───な…!?」
「…ハァ…‥ハァ、ッ─…」
互いの視線がピタリ合わさる。
その刹那──橋を支配する空気が一変した。