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明治鬼恋慕
第9章 紅粉屋
そしてリュウに感心しているのは焔来だけじゃない。
二人を盗人と決めつけていた大人たちも、彼らの言い分にやっと耳を傾け始めた。
「無知な田舎者かと思えば、どうやらお主は礼儀をわきまえているようだな」
「……」
「街を訪れた理由はなんだ?」
「…旅に必要な物を、調達に」
「旅…とな。いったいどこから来たのだ」
「山向こうの小さな人里です」
「二人だけの旅か?」
「そうです。僕らは早くに親を亡くしたため…身寄りもありません」
又左衛門はいくつか質問を繰り返した後
「なるほど」
大きく頷いて納得したようだ。
「この状況で、その様に冷静な話し方…なかなか肝がすわっておるな。気に入った」
縁側に立つ彼は満足そうに笑い、「面をあげよ」と二人に声をかける。
それに従って焔来とリュウが顔をあげた。
又左衛門は廊下を歩く下働きの男に何かを指示してから、庭に座る二人に顔を戻した。