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明治鬼恋慕
第10章 狂骸湯
苦しむリュウと狼狽える焔来を、又左衛門が見下ろしていた。
男の顔には下卑た笑み──この状況が面白くて仕方がないとでも言いたげな。
「先日、軍部の者が話していてな。ここから山をひとつ越えたある村から、鬼が逃げ出したのだと」
「……!!」
「確か村の名は、落方村。逃げたのは…黒髪の少年がふたり…か。…クク、人相書( ニンソウガキ )にも目を通したがなぁ」
二人の容姿を舐めるように…順に目を通し
唇をそり返しながら口の端をあげた。
「──…それがお前たちであろう」
「ち、ちがう!! 俺たちには関係ない!」
「ほぉ…それは本当か?」
「そうだ、そんな決めつけでリュウを刺すとかてめぇら頭おかしいだろ!」
「ふふ…」
全てを見透かされていた。
胸の中が煮え返る。
動顚( ドウテン )する焔来の言葉は、どうしたってまごついた。