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明治鬼恋慕
第10章 狂骸湯


狂骸湯( キョウガイトウ )──それは別名、鬼殺し。


「警戒せずとも只のにごり酒。ただし人が飲んだ場合であるが…」

「……」

「鬼が飲めば命は無いぞ。…ククっ、フ、ははは!」


それは禍々しい薬であった。

鎌倉時代…将軍の指示で作られたと言い伝えられる、鬼を殺すためだけの薬。


「これを飲んだ鬼は気が狂い、三日三晩苦しみ続けたすえに…、最期は呼吸を忘れて死に絶える」

「…ッ…は、あ…!? 何だよそれ…!」

「実に高価な代物だ。これをお前に賜ってやろうぞ、焔来とやら」

「──…!!」


身の毛もよだつ話を受けて、焔来は改めて器の中を見下ろした。


微かに甘い匂いを放つそれの色が

自分を呑み込もうとする底無し沼のように思えた。


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