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明治鬼恋慕
第10章 狂骸湯
舌に広がった味も、鼻をぬけた香りも…僅かに甘い。
喉をとおった感触は、酒に似ていた。
「……」
落方村でリュウと酌み交わした酒を思い出す。
あの頃は…まさか村を去ることになるなんて考えていなかったし、それなりに楽しく、呑気に毎日を過ごしていた。
自分が鬼だってことも、忘れるくらいに──。
.....
─ガシャン!!
「……ッ……ぅ゛」
焔来の手から滑り落ちた空の器が、粉々に砕けて飛び散った。
器を差し出した下働きの男が慌てて後退し、盆を胸にかかえて逃げ去る。
焔来はその場に膝をつき──
両手を喉に当てて目を見開き、人が変わったかのように叫びだした。