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明治鬼恋慕
第10章 狂骸湯
「…うあ、は、あああ!…ハ、あ゛ぐ、…ああー!」
「ほむら…ッ‥!! 焔来!焔来!」
「あ゛つ‥ぅ、ぐぁ……ハァァ‥ああ…!! 熱い…っ 」
喉をおさえる手が胸に下がり、着物の上から爪を立てて掻きむしる。
…かと思えば、今度は頭をかかえる。
恐ろしい熱さが身体中を無秩序に駆け巡り、焔来を狂わせ、強大な苦痛を与えた。
「…ハァっ‥嘘だろう焔来!? しっかり…っ、クっ…!! するん だ…!!」
「ああー…!く…ッ…!! あ゛…ぐっ、ぐぁぁ!!」
「──…まさか飲むとはなぁ。狂骸湯が偽物である可能性に賭けたのか…?」
焔来の絶叫とリュウの声で、一気に裏庭は騒がしくなる。
リュウを捕らえている用心棒たちも、焔来の過剰な苦しみ方に恐れをなして顔を曇らす。
しかしそんな状況でさえ…眉ひとつ動かさない又左衛門は、なかば呆れた声で彼等に指示を出した。
「友のためとは言え全くもって理解できぬ選択よの。──…まぁ良い。早くその者を捕らえろ」
「…っは、ただいま!」
「そちらの鬼はいつもの茶屋へ売りにゆけ。くれぐれも人目を避けてな」
「…!? で、ですが旦那様、この者は解放するという約束なのでは…?」
「…ふ、約束とな」
「……っ」
「くだらぬ戯言はやめよ」
「し、失礼を…っ」
命令に逆らえない彼等は、後ろめたさを引きずりながら焔来に縄をかけ、さらにリュウを抱えて運び出す。