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明治鬼恋慕
第11章 夜叉

『 ごめんなさい…焔来、ごめんなさい… 』
母さんの泣き顔はとても綺麗だ。
俺まで…もらい泣きするくらいに。
『 ひとりは心細いでしょう。…でも仕方がないの。お前だけなら、村から消えても…しばらくの間なら誤魔化せられるから…っ… 』
『 父さんと母さんが村に残って時間をかせぐ。その間にお前だけでも……!! 』
いやだ
いやだ、いやだいやだ!
『 焔来! 』
いやだよそんなの…っ
俺も一緒にいさせて
殺されたっていいから、俺もここにいさせて!
『 それは駄目だ 』
父さんは強く言い切った。
風呂敷に包んだ荷物を俺に押し付ける。
俺は──悔しくて悔しくて、ひとりぼっちなんて絶対に嫌だったけど、泣きながらその風呂敷を受け取った。
『 お前だけは生き残ってくれ 』
父さんと母さんの意思は固くて、絶対に変わらない。それを頭のどこかではわかってたんだと思う。

