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明治鬼恋慕
第12章 陰間茶屋



信じられない。


そこには焔来が立っていた。



「──っ…、リュウ!」


「な‥‥?」



乱れた息と着物をまとう焔来が、傾いた視界の中に立っているのだ。

彼は右手で障子を開け、他方の手には鞘に収まった刀があった。




....




何故? 焔来が…!?



「──…リュウの声が…聞こえた…っ」

「……っ」

「俺を呼ぶ声が…!…聞こえた」

「どうし て…」


こんなにも小さく掠れた声が、焔来にだけは届いたと言うのか。

こうして無事に現れてくれた焔来を前にして、リュウの瞼の裏には涙が滲む。


「一緒に逃げるぞ! リュウ」


焔来はリュウのもとへと駆け寄り、彼を縛る縄を切るために刀を鞘から抜いた。

抜いた刀の刀身には──

べったりと、赤色の血が付いていた。


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