この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
明治鬼恋慕
第12章 陰間茶屋

その血はまだ鮮やかで、新しい。
「…焔来…!? 平気なのかい? 狂骸湯、は…」
「…っ…それは」
焔来はリュウの縄を切り、彼の背中に手を添えて上半身を起こさせた。
困惑するリュウから目をそらす。
「飲んだけど……もう、なんともない」
「なんとも、ない?…っ…そんな、本当に…!?」
「あ、ああ。偽物だったんじゃねぇの?」
「……!」
焔来はわざとらしく誤魔化した。
まだ真実は話せない…。
「俺は死ななかった。…で、あの野郎を──俺が、この刀で」
「……」
「…殺した。斬ったんだ。そのあと、屋敷にいた別の男を脅してこの茶屋のことを聞き出した」
ただこれだけは正直に話さなければと焔来は思った。
自分が初めて、この手で人間を殺したこと…。
それは血濡れた刀を見ればわかることではあるが。
「──…俺を信じろって、言ったろ?」
「……うん、ハァ、そう…だね」
やっと…リュウが笑う。
だが、リュウが口の端に浮かべた笑みは実に控え目なものだった。

