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明治鬼恋慕
第12章 陰間茶屋


その血はまだ鮮やかで、新しい。


「…焔来…!? 平気なのかい? 狂骸湯、は…」

「…っ…それは」


焔来はリュウの縄を切り、彼の背中に手を添えて上半身を起こさせた。

困惑するリュウから目をそらす。


「飲んだけど……もう、なんともない」

「なんとも、ない?…っ…そんな、本当に…!?」

「あ、ああ。偽物だったんじゃねぇの?」

「……!」


焔来はわざとらしく誤魔化した。

まだ真実は話せない…。


「俺は死ななかった。…で、あの野郎を──俺が、この刀で」

「……」

「…殺した。斬ったんだ。そのあと、屋敷にいた別の男を脅してこの茶屋のことを聞き出した」


ただこれだけは正直に話さなければと焔来は思った。

自分が初めて、この手で人間を殺したこと…。

それは血濡れた刀を見ればわかることではあるが。



「──…俺を信じろって、言ったろ?」


「……うん、ハァ、そう…だね」



やっと…リュウが笑う。

だが、リュウが口の端に浮かべた笑みは実に控え目なものだった。


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