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明治鬼恋慕
第12章 陰間茶屋

それでも平気だと言い張るリュウは、逆に焔来のことを心配してくる。
リュウはいつだってそうなんだ。
“ 俺のことばかり優先して、自分は後回しだ…!! ”
それは自分自身も同じだが、焔来にその自覚はない。
「もしかして寒いのか!? 肩、震えてる…」
「…ッ─僕は大丈夫だから…!」
どう見ても大丈夫ではないリュウの顔を覗きこむ。
…ふと、焔来の鼻に甘い匂いが香った。
「…ンだ、これ…」
この部屋の中に充満している匂い。
それは花のように青さのある香りとは違い、もっと甘ったるくて……重たい。
この切迫した状況に、その甘さが腹立たしくて
焔来は乱暴に鼻をすすった。
「──!! 吸わないで! 焔来」
「え……?」
「この煙を、嗅いではいけない……っ」
するとリュウが突然 態度を変えた。
慌てて声をあげた彼の──その瞳の力は弱々しく、睫毛( マツゲ)が細かく震えていた。

