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明治鬼恋慕
第12章 陰間茶屋

「ごめんね焔来。…焔来だって…!! ハァ、…すごく、辛そうなのに」
「馬鹿。俺はもう心配いらない……っ」
両側を硝子障子にはさまれた仄暗い廊下。
二人は茶屋の表とは逆側へ進んだ。
途中ですれ違った陰間( カゲマ )の少年が、二人を不思議そうに横目で見る。
何も知らないのだろう、その少年は、自分の客取りのためにさっさと廊下を曲がっていった。
そして焔来たちは裏口から密かに抜け出し、音をたてぬように木戸を閉める。
...パタン
外は凍るような寒さだった。
裸足のリュウに焔来が足袋( タビ)と草鞋( ワラジ )の深靴をさし出し、リュウはそれを履いた。
軒下から出ればそこには雪が積もっている。
こんな夜を素足でうろつけば、あっという間に不審な目を向けられることだろう。

