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明治鬼恋慕
第12章 陰間茶屋

けれど、互いに異なる理由で身体が熱い二人だ。
そんな彼等にはこの空気の冷たさがかえってちょうどいい。
裏口から表の通りに出た後、なるべく目立たないよう俯いて歩く。
二度ほど、客引きの男に声をかけられたが無視をした。
「…入るときに気付いたけど、この街は周りを壕に囲まれてんだな」
「そう…だね。…脱走者をっ…ふせぐためさ」
「正面の門には見張りがついてたし、…くそ、黙って出られるのか?──…て、…あいつらは…?」
「あれは…!!」
柳の木の下を通りすぎ、道の突き当たりに構える黒塗り木造のアーチ門に目をやると
…そこには、番男と話す黒服の人間たちが集まっていた。
「──憲兵だ!」
「憲兵っ…、あれが…!?」
リュウが突如、立ち止まる。
そしてほぼ同時に、番男と話し終えた憲兵たちが花街へなだれ込んできた。

