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明治鬼恋慕
第12章 陰間茶屋

初めて見る憲兵たちは、周囲から浮いた…なんとも奇怪な格好の集団だった。
焔来がそう思うのも無理はない。
いち早く洋装を取り入れた憲兵は、ボタンをあしらった黒の上下と、白帯に紋章を縫い付けた黒帽子が制服である。
生まれ故郷にも落方村にも、そんな西洋かぶれな人間はもちろんいなかったのだ。
「こっちだ…っ、焔来」
「ッ─…わかった!」
だが、今はそうやって憲兵の観察をしている場合ではない。
二人はさっと向きを変え、路地へと身をすべらせた。
間一髪、二人は見付からなかったようだ。
路地に隠れた彼等を誰も追ってこない。
花街へ入った憲兵たちは固そうな靴で雪を踏みしめながら、道を真っ直ぐ進んでいった。
それは一目散といった感じで
焔来が路地から顔を出した時には…すでに彼等の背中だけが見えていた。

