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明治鬼恋慕
第13章 迎撃

この季節、そしてこの真夜中…
街道を歩く者などいやしない。
積もる雪が深さを増しながら、馬の足を邪魔していく。
「誰も付いてこれてないな」
それでも背後に追っ手の姿は見えなかった。
二人が操る馬は、過酷な雪道を逞しく駆け抜ける。
まるで、危機迫った二人の状況を理解できているかのように。
「リュウ、…なぁ、っ…ハァっ」
「ん?…なに?」
「どこまで逃げるんだ? 俺たち……どこに行くんだよ」
「そうだね…っ」
馬の背にしばらく揺られ続け、息を切らせた焔来がリュウに問う。
問う焔来も、応えたリュウも、その口からは白い息が漏れていた。
「次の町までこのまま走るか。それとも──」
リュウは迷っていた。
このまま街道沿いに馬を走らせれば、次の街に到着するはず。
だが軍部の情報網は馬鹿にできない。
街に着いた途端にまた憲兵に狙われるのはごめんである。

