この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
明治鬼恋慕
第14章 決別
朝からずっと働きづめだったことがわかる。隣の父は少しくたびれた様子で、日暮れの田んぼを前に目を細めている。
「お前も遊んでばかりいないで、母さんを手伝ったらどうなんだ」
そして焔来の背を叩いてきた。
軽くつまずきながら数歩飛び出した焔来は、知らぬ間に子供の姿に戻っている自分に気付いた。
空を掴むように上げた腕は、ずいぶん短い。
それに比べて父の腕はがっしりとしていて逞しかった。
「……父さん」
焔来は神妙な顔付きで父を見上げる。
「…どうした?」
「俺はずっと知らなかったよ。父さんが人間だったってこと」
「……」
「俺が…夜叉だってことをさ」
非難の想いを込めて焔来が口を開けば
父が顔を下げて、やっと二人の視線が合わさる。
ちょうどその時、田んぼに立つ母がこちらに目を向けた。