この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
明治鬼恋慕
第14章 決別
焔来たちに向かって母が手を挙げて合図する。
こちら側も何か反応をするべきで、二人は遠くの彼女に手を振り返した。
「…黙っていてすまなかったな」
笑顔で手を振る父親。
けれど、焔来に向けるその声は落ち着いていた。
「いつ気付いたんだ?」
「…父さんたちと別れてひとりになった後。俺は本当の " 鬼 " に会ったんだ。そいつと一緒に何年も暮らしていくうちに──自分は何かがオカシイって、少しずつわかってきた」
「……」
「俺は人間じゃない。でも…人間に、似てるなって」
「そうか…」
なにが「そうか」だよ。
ふざけんなよ。
焔来の悪態は口から飛び出す直前だった。
言いたいことも聞きたいことも山ほどあるのに、妙に堂々と構えた父の態度がそれをさせない。