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明治鬼恋慕
第14章 決別
期待が重い。
向けられる眼差しが──自分を締め付ける。
確かに父さんは正しいさ。
父さんは人間でありながら、最期まで母さんを裏切らなかった…。
母さんを守って、母さんと一緒に殺された。
そんな父さんの言葉には説得力がある。人と鬼がわかり合う世界を…それを願う父さんを、誰も馬鹿にはできないんだ。
でも…俺には、無理だよ。
「俺は──ッ…弱いから」
だから許してくれよ。
わざわざ夢の中にまでやって来て、俺を試したりしないでくれ。
「無理だと決めつけるのは早いだろう…。お前は私の自慢の息子だ」
「やめろっ! 期待なんてするなよ…っ」
「…重荷なのか?」
「あ…っ、たりまえ、だろ!」
吠えた焔来の視界が揺らぐ。
それは、夢から覚める前兆だ。
髪をくしゃくしゃと撫でていた手の感触が、フッといなくなり
目の前の父から穏やかな笑みが消え
周囲に散らばっていた村人の声が霞み始め……
そして
遠くの田んぼから不思議そうにこちらを見守っていた母も
申し訳なさそうに小首を傾げて笑った後、稲穂を揺らす風とともに消えてしまった──。
ふるさとの景色と、溶け合いながら。
───…