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明治鬼恋慕
第15章 理由
いつの間にか戻ってきている。
信じられない。意味がわからない。
「…ハ、…はぁ…!?…っ…んだよ、それ」
近付いて戸口に触ると、…どうやら幻ではないらしい。
強風にも関わらず簡単に戸は開いた。まるで焔来を迎え入れたように。
「……っ」
焔来はわけもわからず小屋の中に入った。
らんぷの灯りは消えているが完全に真っ暗なわけではない。
小屋の様子は、リュウを探しに飛び出したその時のままだった。
床に敷かれたむしろも、横に投げられた夜着も、火の途絶えた火鉢も、その上の土釜も…何ひとつ変わっていない。
相変わらず建具は外の吹雪でがたついているが、それでも室内は暖かかった。