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明治鬼恋慕
第15章 理由
俺だけが戻ってきた。
「…くそぉ…!! なんでっ、なんでこんな所」
リュウはいないのに。
リュウは今も冷たい雪の上に横たわっているに違いないのに。
こんな所。
「ふッッざけるな…っ……ぅ」
焔来は怒りにまかせて横の壁をでたらめに殴る。
「ぅぅ……ふざけんなよ」
拳で殴ったから、今度は手の甲が擦りむけた。
負傷した足で力任せに家具を蹴っても、痛手を負うのは自分の身体のほうだった。
「のたれ死ねばいいだろぉ!? 俺なんて…っ」
ガツ! ガン!
「生きなくていいんだ!…ひとりじゃ意味ッ…─ないんだ…!!」
ガン!!
「ぅぅ゛……駄目 なんだよぉぉ…!!」
二人ぶんのむしろ
二人ぶんの夜着
二人ぶんの茶器と……そして
「…ハァっ…──!?……ッ…こ、れ」
昨夜の茶器を持って投げようとした時…
食器として使った器の中に、焔来はあるものを見付けた。