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明治鬼恋慕
第15章 理由


握り飯──


「こ れ……」


投げようと振り上げていた手が下りる。

昨夜に押し麦を食べた時に使った二つの器。まん丸の小さな握り飯が入っているのは、間違いなく焔来が使ったほう。

小屋に残っていた麦は、昨日で全部を食べた筈だ。

もともと量は少なかった。

それをリュウと半分に分けたのに…。




『 焔来は食いしん坊だからね… 』




リュウ……




『 焔来は何を持っていくの? 米俵か押し麦? 栗?──…クスクス、釜は重いから勘弁してね 』




そう言えばあの時、俺は握り飯を選んだっけか。

リュウとともに落方村を去った日。

もうはるか昔のことに思えてほとんど覚えてない…。



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