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明治鬼恋慕
第15章 理由
怒り任せに暴れて…それからの、脱力。
焔来はその場に座り込んだ。
器を持つ手は小刻みに震えるだけで動かなかった。
「…ふ、ッ─……ぅ、…っ」
少ない食料から焔来のために用意された握り飯。
今さらになって、食べられるわけがない。
焔来の手の震えが伝わって、乾燥した握り飯はパラパラと形を崩し始めた。
“ お前……馬鹿だろ。最後まで俺のことばっか気にかけてんなよ ”
だから…怖いんだ。
自分のことを省み( カエリミ )ない、そんなリュウが怖いんだよ。
“ そして俺はあの時──…ッ ”
俺は、憲兵を次々に殺していくお前が
うってかわって俺に向けられる邪気の無い笑顔が
怖くて
怖くて……
隠しきれなかったんだ。
あの時の俺の顔は、間違いなくリュウを拒絶した。