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明治鬼恋慕
第3章 擬態
「…痣( アザ )ができているね」
「触るなよ」
焔来の腕に浮かぶ赤黒い痕を、リュウが指でなぞる。
痛がる焔来はその手を払った。
「手当てしよう」
「そんなの必要ない。一時間もすれば治ってるだろうしな。それより飲もう!」
「だが…」
「こんなの俺等からしたら怪我のうちに入らないって。…それはリュウも良く知ってるだろ?」
笑った焔来は黒い器を用意して、土間の奥へ二人分を運ぶと、むしろが敷かれた床に腰を下ろした。
そうして振り返った彼の、頬にあった擦り傷は…
気のせいだろうか。既にきれいに無くなっている。
…普通の "人間 " なら
たったの一時間で痣が治ることもないだろう。
しかしここには単純な秘密があった。
簡単な話だ。焔来は人間ではないのだ。