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明治鬼恋慕
第16章 吐露
そうしてしばらく自嘲の笑みを浮かべた後
…リュウはそっと口許をぬぐった。
血をぬぐった拍子に不気味な笑みを消し去る。
「…でも僕は、君を怯えさせたいわけじゃない」
笑みが消えた後の真剣な表情。
眼差しだけは柔らかく…焔来へと注がれる。
「これ以上焔来を怖がらせるのは可哀想だよね。だから…っ…ほら、もう…苛立つのはやめるよ」
「……っ」
「ねぇ…っ、…、焔来……。僕の話を…聞いてくれないかい…?」
霞んだ声にも、子供をあやすような甘さが含まれた。
ようやく硬直が解けてきた焔来は、尻をつけたままリュウに身体を向け、少しだけ…後ずさる。
床に散った器の破片で掌に傷を負ったが
リュウを真っ直ぐ見上げる焔来は、それに気付くことさえなかった。