この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
明治鬼恋慕
第16章 吐露
「僕がここに戻った理由…わかる?」
「理由…!?」
リュウに問われても、その答えはわからない。
自分自身がこの山小屋にたどり着いた意味、それすらも焔来はわかっていないのだから。
「…知ら…ねぇ」
「焔来を探して来たんだ」
「……!」
だがリュウのほうは明確な理由を持っていた。
彼は彼の意思で、こうして今…ここにいる。
「生きる理由も死ぬ理由も、失った…っ…のに、まだ生きてる僕は空っぽだろう?…でもひとつだけ」
ひとつだけ、リュウにも残された感情があった。
焔来に拒絶されたことで確かに生きる理由は失っていた。けれどたったひとつ、残っていたもの…。
「理由は無くなったけれど、執着はあるんだ」
焔来への執着。
「ねぇ…わかる? 僕は焔来が欲しい。君を手に入れたい……!! この、願いは」
「……!?」
「──…たとえ君に拒絶された今でも、叶う事だ」
リュウの瞳は切実だった。
焔来を愛し、ただ守っていた頃とは明らかに違う想い。
自分の欲に従った時──リュウの全ては焔来を求めたのだ。