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明治鬼恋慕
第16章 吐露
もう手遅れ──
力任せに焔来を突いたリュウの口から、心の叫びが溢れだす。
「……僕 だって‥っ‥!! …僕だって本当は……、鬼になんて生まれたくなかった──」
「…っ‥…リュウ…!!」
「化け物‥に‥なんて‥ッ ──…なりたく…!! なかったのに……!!」
長い黒髪を振り乱しながら叫んだ言葉は
焔来が初めて耳にした──リュウの弱音。
さらけ出されたのは、深い傷を負った過去の記憶。
「人間みたいに仲間がっ、…仲間が…ほしくて……‥!! …人間として生きようとした時もあった! でも…──ッッ」
かつての彼の名は、柳太郎。
命令どおり任務を遂行すれば仲間として受け入れられると信じて…振るった刀。
…だが、受け入れられることはなかった。
組で一番の幼さでありながら何の躊躇もなく標的を殺してみせる彼は、仲間である筈の者たちから、白い目を向けられた。
『 ありゃあ…化けもんだ 』
柳太郎に剣術を教えた兄弟子も、同じ反応だった。
『 お前の刀の腕はたいしたものだよ。だがお前には人として大切なものが足りないみたいだな 』
…わからない
何が足りないのか
何故、そんな目を向けられるのか。
だって…彼は、" 人 " でないから。
いかに取り繕ったとしても、彼は鬼でしかなかったのだ。