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明治鬼恋慕
第17章 冬風
そして
落方村から山ひとつを越えた、とある街。
白鷺城を見上げる街路にて、豆腐を入れた鍋を抱えて歩く女性がいた。
歳は二十を越えたぐらいか。目元が愛らしいその女性は丸髷頭に前掛け姿。家路についたならすぐ、夕飯の支度をするのだろう。
ぱたぱたと落ちつきのない歩き方は活発な子供時代を想像させた。
太陽が西の山へと傾き始め、長屋に挟まれたこの通りを途端に日陰が覆いだす。
季節の変わり目ということもあり、日陰に入ると若干の寒さが人々の肌を震わせた。
先ほど彼女とぶつかりそうになった売り子の少年も、冬用の綿入り着物をしっかりと着込んでいた。