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明治鬼恋慕
第17章 冬風

もう八年も前の話だ。
まだ少女であった彼女は、生まれて初めての嫉妬で心の制御を失い──「あの人」を裏切った。
酷く後ろめたい
忘れたほうが楽だとわかっているのに、この晩秋の風が運んでくる。
冬の訪れを知らせる風が、彼女の胸のどこかに空いた風穴をくる年くる年…吹き抜けるのだ。
カサ...
固く乾燥した落ち葉が舞う。
「ほらそこの、べっぴんさん。見てかないか?」
「…っ…?」
すると少し歩調が緩んだ彼女に右手の見世から声がかかった。
振り向くとそこは小間物屋で、中から店主が手招いている。
寄り道をする時間の余裕はないのだが、店先に並ぶ商品がなるほど確かに綺麗だったので、彼女は立ち寄ってみることにした。

