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明治鬼恋慕
第17章 冬風
彼女が見世の中に目を向けると、そこには二人組の青年がいるだけで、他に客はいない。
確かに繁盛しているとは言い難かった。
「──…」
「お客さん、どうした? 何か気になる物があったのかい?」
「…っ…あ、……いいえ」
黒髪の青年たちの背中で、無意識のうちに彼女の視線は止まっていた。
店主に問われて慌てて目をそらす。
気のせいだ……彼女は店主に会釈をして見世を立ち去ろうとした。
....
「……これ、君に似合うんじゃない?」
そんな彼女の耳だが、背後で交わされる青年たちの会話をすんなりと拾ってしまうのだった。