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明治鬼恋慕
第4章 鬼狩り
「曲芸とかもあるらしい」
「僕は遠慮するよ」
本音を言えば、リュウが断るのは承知の事だった。
こういう時にリュウは決して誘いに乗らない。
彼は人混みを嫌っているし…それに、千代のことが嫌いだった。
「…ったく…、俺と二人なら来るってか?」
「うーん、どうしようか…」
焔来が試すように聞くと首を傾げながらはぐらかす。
「教えない」
「わーかった、んじゃ行ってくる」
「うん、行ってらっしゃい」
まるで海へ出掛ける漁師を見送る妻のように、リュウは軒の下で手を振った。
「──…焔来」
「…ん?」
と思えば、数歩か歩いた焔来を呼び止める。
「どうかしたか?」
「…君が戻ってきたら…話が、あるんだ」
「何だよ気になるな。じゃあ後でな」
「…うん」
意味深なことを言って微笑むリュウに、背を向けた焔来も手を挙げて返した。