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明治鬼恋慕
第4章 鬼狩り
───
芝居屋の影響で人気( ヒトケ )の少なくなった村の中心を駆け抜け、焔来は懸命に腕を振った。
途中、何人かの村人が彼に気付いて話しかけたが
返事をしない彼には…そもそも声が届いていないらしい。
「ハァっハァ‥」
逃げないと
誰もいない所に──
人間が、いない場所に。
西から東へ小さな村を横断する。
家が無くなり、道が狭くなり…
小川へぶち当たった焔来は転がるように土手を下りて、川へ落ちる寸前で止まった。
「…ッ…ハァっ! ハァ……ぅ」
胸の奥につっかえた物を吐き出したくても、上手く嘔吐ができない──。
季節外れに噴き出す汗。
土手に手を付いた焔来は、水面に映る自分の顔を苦しげに睨んだ。