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明治鬼恋慕
第4章 鬼狩り
男でありながら肩を震わせて泣く焔来は、いつもより小さく見える。
彼を見下ろすリュウは、目を細めて同情していた。
親を奪われた彼の境遇…そして
彼の愚かさに。
「……僕は、恐怖なんて感じない」
虚ろな笑みを頬に漂わせ、リュウが言葉を続ける。
「僕は一瞬たりとも、人間を信用したことがないから、ね。…だから怖くないさ」
焔来も自分と同じなら…こんなに苦しまなくてすむのに。
リュウは彼を不憫に思う。
けれど焔来からすれば、そんなふうに達観できるリュウが信じられなかった。
「よく、そうやって…わりきれるよな」
「だって鬼と人間は違う種なんだ。僕たちだって魚を食べるし、熊が出たら殺すだろう?──…人間と僕らの関係も、結局はその程度なんだから」
「…俺にはっ…無理だ…」
「……信用するだけ無駄なんだよ」
そうだ…ハナから信用なんてしなければ
裏切りを恐れる必要もない。
それでも焔来は希望を捨てきれなかった。
人在らざる自分でも、人間の世界で…人と共に生きていくことができるのだと、その希望を捨てきれない。
何故なら彼は…──
ワン!ワン!