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明治鬼恋慕
第4章 鬼狩り
どうして、わたしを見てくれないの…?
「焔来…大丈夫? どこか具合が悪いの?」
「…っ…俺は平気です。は…早く戻ってください、芝居が終わっちまいますよ」
俯いたまま立ち上がった焔来が、土手を上がってくる。
千代の横を通りすぎて…汚れた足を動かして道を引き返した。
「俺はリュウと…家に帰ります。すみません」
「…なんで?」
「ちょっと野暮用です。千代様は…村の皆と」
「いッ…嫌だ!」
「……っ」
突き放した言い方に堪えきれず、千代は彼の後ろ姿に向かって叫んだ。
「わたしは芝居を見たいんじゃないっ。焔来と…焔来と見たかっただけ……!!」
「──…!」
「焔来が帰るなら、わたしも…っ」
焔来の足が止まる。
だが振り返ることはない。