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明治鬼恋慕
第5章 出立
握り飯の包みを、風呂敷でくるむ。
「……なぁ、千代様にも内緒で行くのか?」
「……」
リュウの動きが止まった。
焔来は包みを置いて、陰鬱な表情を見せる。
「この何年間、千代様が俺たちに良くしてくれたのは事実だろ? なのに…こんな形で別れるなんて」
「…何がいけないの」
「…っ…そりゃあ、リュウが千代様のことを嫌ってんのは知ってる。でもそれとこれとじゃ話は違うとおも──…ッ」
「──僕は千代様が嫌いなんじゃない」
刀を身に付けたリュウが焔来の言葉を遮って振り向く。
不思議だ…
腰に刀があるだけで、普段にもましてリュウの姿勢が美しく映る。