この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
明治鬼恋慕
第2章 落方村
「わぁ…っ」
クーン
「わたしも触るっ!」
「て、あーー! 駄目です!」
濡れ縁の下からぴょこぴょこと姿を現したのは、薄汚れた白色の仔犬であった。
それを見た少女は好奇心で目を輝かせ、次の瞬間には飛び付かん勢いだった。
その反応を予想していた焔来( ホムラ )は慌てて彼女の手を遮る。
「こいつ野良なんす。こんなに汚れちまってるし、もし噛み付かれて病気もらうようなことになったら…」
「平気だもん」
「何ですかその自信。千代様に怪我でもさせたら、旦那様に合わせる顔がない」
焔来に諭されているこの少女は千代( チヨ )と言う名だ。
千代はこの落方村の生まれで、名主のひとり娘である。