この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
明治鬼恋慕
第5章 出立
もう逃げられるのを恐れる心配はない。
自分はすでに焔来の深いところまで知ってしまったんだ。
「わたし、焔来に…ちゃんと聞かなきゃ…」
たとえ本当に彼の正体が鬼でも
今までの焔来がいなくなったわけじゃない。
今までにくれた優しさが消えたわけじゃない。
彼がどんな目的でわたしと一緒にいたのか
「逃げずに聞かないと、駄目よね…!」
泣いてばかりの自分では駄目だ。
恋に落ちたのは自分の心。
この気持ちを今度こそ、ぶつけないと。
千代は帰路を引き返し、村の外れにある焔来の家へと走った。