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明治鬼恋慕
第5章 出立
彼の家はそれほど遠くなく、千代はすぐにたどり着く。
“ 焔来、帰ってるかな? ”
正体を告げた彼等は、もう村からいなくなってしまったのかもしれない。
一抹の不安を胸に彼女は戸口の前に来た。
引き戸は閉まっている。
訪問を知らせるために戸を叩こうとした時──
「……!」
中の異変に気が付いた。
「…ほむ、ら……?」
何故か戸を叩く手が止まり、彼女は後ずさった。
引き戸の横には頭より高い位置に格子がある。
その隙間からは中の声が、息を呑んだ彼女の耳にはっきりと届いてしまった──。
......
……リュウっ‥違う、俺は別に‥!!‥ハァ、千代様のことが好きなわけじゃあ…ッッ
…なら誰が好きなの?
──…リュウは…っ…俺にとって特別だっ!