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明治鬼恋慕
第6章 山越え

「…っ、でも」
だが次の瞬間には、焔来は輝いていた目を曇らせてしまう。
「──街に行って大丈夫なのか? 俺たち…政府ってのに追われてるんだろう」
肩を落としてリュウに問う。
そんな彼にリュウは微笑んで、自分も焼き魚にかじりついた。
「心配ないと思う」
「なんでだ?」
「今、鬼狩りが行われているのは地方の村々だ。それに街にはいろんな場所から人が集まるからね。出生の曖昧な僕らがいても、とくに目立たないと思うんだよ」
「本当かよ」
「確証はないけれど。……それにさ」
疑うような…そして期待するような視線を送ってくる焔来に、リュウは笑顔を返す。
「…焔来、行きたそうだし」
「……っ」
「せっかくこうして旅してるんだ。一度くらい、立ち寄ってみてもいいだろう?」
「……いいのか?」
「うん」
「やっぱリュウはいい奴!」
「焔来ってばわかりやすいなぁ」
“ そういうところも好きなんだけど ”
リュウが最後に呟いた言葉は
焔来には聞こえない小さな声。

