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明治鬼恋慕
第6章 山越え
そのまま食事を済ませ、腹が満たされた頃合い
ツン、と不思議な香りが二人の鼻に届いていた。
「ん、…何の匂いだろうな」
「花──だと思うけど少し違うような…。急に届いてきたね」
風向きが変わったことで、今までに無かった香りが鼻をくすぐる。
人よりも嗅覚に優れた彼等にはこの幽かな変化がわかるのだ。
「行ってみるか」
「え、行くのかい?」
「だって気になるだろこんな季節に…さ!」
「…っ…待って焔来…!!」
元気がありあまっているのか、焔来は匂いの元を探るべく川の上流へと森に入ってしまった。
リュウは慌てて火を消して
少ない荷物を手に彼の後を追う。
──
「──…へぇ…すごいな、見ろよリュウ!」
「…ハァ…待ってよ焔来、いったいどこに」
「こっちだ」
「…!…これって…!?」