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明治鬼恋慕
第6章 山越え
先に行った焔来が立っている場所には木々がなく、視界が空へと突き抜けていた。
「赤い、花…──」
その下に広がる一面の曼珠沙華。
興奮した様子で振り向いた焔来に、リュウは信じられないと目を丸くする。
突然現れた鮮赤の世界だ。
「すごいだろ? これ何て花だ?」
「曼珠沙華( マンジュシャゲ )──多くは人里近くに固まって咲く花だ。どうしてこんな山林に…しかも」
リュウが自身の目を疑うのも無理なかった。
曼珠沙華はこんな季節に花を咲かせる類じゃない。
今の時期は花びらの代わりに青い葉を付けているはず。
なのに……
この異様なまでの鮮やかさは何の理屈か。