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明治鬼恋慕
第6章 山越え
「ふ…ははっ、本当にすごいね」
理屈なんてわからないから、笑うしかない。
「綺麗な赤色…」
「しかも変わった花びらだな。炎みたいだ」
「狐花とも言われるからね」
「きつねばな?──…ああ、狐が人を化かす時に出す炎のことか?」
「うん、そうだよ」
返事も半ばに
リュウは前に立つ焔来を追い越して駆け出した。
隙間の見えない花の中にリュウの足が埋まる。
いくつかなぎ倒されて茎がボキリと折れた。
彼は構わず奥へと進むと、こちらに背を向けておもむろに座りこんだ。
“ リュウのやつ、どうかしたのか? ”
腰に手をあてて彼を見守る焔来。
こうして何かに興味を持つリュウの姿は、めったにお目にかかれない代物だ。