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明治鬼恋慕
第6章 山越え

リュウは手近な一本を根元から摘み取り、顔に近付けて眺めている。

「僕はこの花が好きだ」

零れそうな笑みを口の端に浮かべて。


「美しい花の形も、妖しい雰囲気も好きだ。──ねぇ知ってる? 焔来。曼珠沙華の球根には、人間や獣を殺してしまえるほどの毒があるんだ」

「…はッ…毒?」

「それがこれだけ見事に咲いているなんて…いったい、何の暗示だろうね」


リュウが惹かれているのは表面的な花の美しさだけじゃない。

鮮やかな見目に隠された…危険で不吉な魅力だった。



「…♪」

「……ハァ」


それに気付いてしまうと、笑うリュウのほうがよほど妖しく見える。


“ いつになく機嫌がいいのもそういう理由か ”


焔来はやれやれと溜め息をついた。


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