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聖杏学園シリーズ ー囚われの少女達ー
第13章 地下アイドルの秘密 編 1-1
彼らの楽屋のドアの前で、私は大きく深呼吸をした。落ち着いて静かにノックをする。
「失礼します。ファータフィオーレと言います。ご挨拶に伺いました」
「は~い!どうぞ空いてますよ~」
返事を聞いただけでドキリとしてしまう。もう一度深呼吸をしてからドアを開けた。
中に入ると、今までTVや雑誌でしか見ることのなかったアイドルグループのメンバーがそこにいた。特別ファンだった訳では無い。でも、そのイケメンなルックスと人懐っこい笑顔で私達を見ているのが分かると、簡単に目を合わせられなかった。
私達と同じ楽屋なのに、部屋の空気や香りまでが違って感じられる。華やかな雰囲気の中で完全に圧倒されてしまっていた。

「今日一緒に出演させて頂くファータフィオーレと言います。生でTVに出るのは初めての新人です。宜しくお願いします」
感じたことのない種類の緊張をしている。急いでお辞儀をしながら、早く楽屋から出たくなった。でも、顔を上げた私達に彼らから言葉をかけてきた。

「5人グループだよ!ちょうどいいじゃん!」
「うん、全員可愛い!これなら喧嘩しなくて済みそうだ」
「えっ?えっ?・・・」
何を言われているのか全然分からない。私達は互いに顔を見合わせてしまう。
戸惑っている私達を見て、グループのリーダーが座ったまま言った。
「ごめんね、こいつら気が早いから。何のことか分からないよね・・・」
そう言ってから私に近づいてきた。背が高い。クッキリとした二重の目とスッと通った鼻筋。女の私から見ても羨ましくなる白い肌の甘いマスク。TVで見慣れたその顔をグッと私に近づけて微笑んだ。
もともと同年代の男の子には興味が無い私でも、それはキュンとしてしまう程の魅力的な笑顔だった。
「あ・・・あの、すいません・・・」
意味もなく謝った私の肩に手を乗せると、真顔で見つめてくる。ほんのりと女の子とは違ういい香りがした。
「謝ることないよ。それに夏妃ちゃん、緊張しすぎだってば」
空いている方にも手を置かれ、リラックスしていいんだよ、と両肩を軽く揺すられた。
「は、はい・・・ありがとうございます」
私はようやく、ぎこちなくても笑顔で返事を返すことが出来た。
「愛美ちゃんも涼奈ちゃんも、それから舞風ちゃんと心瑠ちゃんも、もっとリラックスしなよ」
続けてメンバー全員の名前を呼ばれて、私達は浮足立ってしまった。
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