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女子大生 水野果歩
第176章 女子大生 水野果歩(176)

その日果歩は憂鬱な気持ちで、アルバイト先であるトミタスポーツに向かっていた。
気が進まない。というより行きたくない。
どんな顔をしてスタッフルームに入っていけばいいのか分からなかった。
なぜなら果歩はつい先日ここのスタッフ全員と身体の関係を持ってしまったのだから。
果歩 「・・・・・・。」
果歩は車両の窓側に立って外の景色を眺めながら、大学での出来事を思い出していた。
〝うわぁマジで水野さんヤリマンだったのかよ〟
〝じゃあそういう事だから水野、明日も頼むな〟
否定したい・・・だけどできなかった・・・なぜならそれは事実であるから・・・
短い間に自分は20人以上の男の人達を受け入れた。それでだらしのない女だと言われても否定できない。
ズーンと心が重くなる。
以前までは電車の窓から外の景色を見るのが好きだった果歩。
季節ごとに変わっていく街の色を見て楽しんだり、遥か遠くの景色を見ながら(あの先には何があるんだろう、今度行ってみようかな)などとワクワクするような気持ちを抱いたり。
しかし今の果歩にはそんな気持ちの余裕などなかった。
果歩は狭い、本当に狭い世界に入り込み、その中で延々と悩み続けている。
暗い世界で狭くなってしまった心の視野は、その出口を見つけられずにいた。
果歩 「・・・はぁ・・・」
果歩は疲れていた。とても疲れていた。
身体ではない、心が疲れきっていたのだ。
自然と涙がポロポロと流れる。
最近は毎日泣いているような気がする。
ふと1人で考える時間があると果歩は必ず涙を流していた。
涙を流して、身体の奥に溜まった不安を外に出そうと、身体が自然とそうしようとしていたのかもしれない。
電車に乗っていた他の乗客達が果歩の方をチラチラ見ている。
女子大生と思しき女の子が一人で涙を流している姿に、この乗客達は何を思っているのだろう。
きっと失恋でもしたんだなと、そう思っているに違いない。
まだ社会人になる前の学生には、恋だけに夢中になれる期間がある。自分にもそういう時期があったなぁと、微笑ましく思っているのかもしれない。
しかしこの1人で泣いている女子大生の心の闇は、周囲の人間が思っている以上に深いものであったのだ。

