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女子大生 水野果歩
第178章 女子大生 水野果歩(178)
抱いてやると言う富田に黙って付いて行く果歩。
富田に果歩が連れて行かれたのはトミタスポーツの建物、その一番隅に位置する部屋だった。
果歩は過去に一度だけこの部屋に入った事がある。あれは初めてここに来た面接の日、果歩が富田に施設を案内してもらっている時に、見つけた部屋だ。
果歩はあの時以来、この部屋には入るどころか、建物の隅にあるためドアの前を通る事さえなかった。恐らくこの施設の中で最も人気(ひとけ)の無いこの場所が、今の果歩には何だか不気味に思える。
富田 「今日からこの部屋がお前の仕事場になるんだからな。」
果歩 「ぇ・・・?」
意味深に富田はそう言うと、その部屋のドアノブをゆっくりと引いた。その瞬間、その部屋の中の生温かい空気を果歩は感じた。暖房が効いているのだろうか、そうだとしたらかなり室温設定は高めだろう。ムワっとくるような温かさだ。
富田 「入れよ。」
果歩 「は、はい・・・。」
富田に言われて果歩はその部屋に足を踏み入れる。そして部屋の中を見渡した果歩は目を丸くして驚いた表情を見せた。
果歩 「と、富田さん・・・これって、どういう事ですか・・・?」
部屋の造りは以前と全く変わってなかった。
広々とした部屋は、側面と天井の全面が鏡になっていて、下にはビニール製のマットが敷き詰められている。そして部屋の四隅にはそれぞれ大きなスピーカーのような物が置いてあった。
初めて見た時はエアロビックスか何かに使う部屋だと思っていた果歩。しかし今の部屋の状況を見て、果歩はどうやらそうでないという事を察知した。
果歩が入ってきた瞬間、幾人もの男の人の声がザワめく。
富田 「どういう事って言われてもなぁ、まぁ果歩のファンみたいなものだな。」
果歩の目に入ってきたのは、マットの上に胡坐を掻いて座る15人程度の男達だった。それもその誰もが果歩が知っている人間。果歩が毎日のように受付で挨拶を交わしていた、トミタスポーツの会員の男性達であったのだ。
部屋中にある鏡の影響で、まるで途轍もなく広い部屋に大勢の男達が居るように見える。
果歩 「あの・・・どうして皆さんが・・・」
あちこちから男達の待ってましたぁの声が聞こえる。普段気持ちよく挨拶をしてくれる人達が、今は全員がイヤらしい笑みを浮かべながら果歩の方を見ている。