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女子大生 水野果歩
第188章 女子大生 水野果歩(188)
果歩の部屋の電気は点いていないし、ノックをしても返事はない。
まだ例のアルバイト先から帰ってきていないのだろう。
陽が沈んでからもう大分時間が経っている。
友哉はアパートの階段に腰を下ろして果歩の帰りを待った。
この階段を果歩と肩を寄り添わせながら上った日々が、なんだかもう遠い昔の事のように思える。
友哉 「・・・・・」
携帯電話を開いて時間を確認する友哉。
・・・果歩・・・遅いな・・・
果歩に連絡を取る事はできないし、大学で同じ学部の友人達に連絡するのもなんだか気が引ける。それは知子が話していた噂の事があるから。
単なる噂なのだと思うようにはしているが、もしかして事実なのかもしれないという怖さもあった。
とにかく果歩に会って、それでゆっくり話を聞けば良いと、友哉は自分に言い聞かせた。
もうすでに時間は0時を過ぎている。
飛行機での長旅に少し疲れも感じていた友哉は、階段に座ったまま地面をじっと見つめていた。
あと1時間して帰ってこなかったら、今日は諦めて今夜泊まる所を探そう。実家は遠いし、前に住んでいたアパートはもちろん解約しているのだから、どこかの安いビジネスホテルでも探すか、それとも誰か友人に頼んで泊まらせてもらうか・・・。
そんな事を考え始めた時、下を向いていた友哉の耳に人の足音が届いた。
ハっとして顔を上げる友哉。
友哉 「・・・果歩・・・?」
目の前にはアパートに向かって歩いてくる女性の姿。
友哉はその場に立ち上がると、その女性の方を見て目を凝らす。
・・・やっぱり果歩だ・・・
友哉 「果歩・・・。」
あと数メートルの所まで果歩が近づいて来た時、友哉は果歩に聞こえるように名前を呼ぶ。
その瞬間、俯き加減で歩いていた果歩は顔を上げて友哉の方を向いた。
果歩 「・・・ぇ・・・」
果歩は友哉の存在気付くと、その場に立ち止まり、驚いた様な表情を見せた。
友哉はそんな果歩の姿を見て一目で気付く。
今、目の前にいる果歩は一見、外見こそ以前と変わりないが、その表情はどこか暗く、そして疲れきっているようだと。
友哉は一年間の付き合いで果歩の色んな表情を見てきたが、今のような何とも言えない悲しい表情は見た事がなかった。