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鮮やかな青
第1章 兄の存在
どうしてそういう大事な事を、足りなくなった小さな隅で済ませようとするのか。兄は気は優しいが、そういうところで気が回らない。まず一番に、どんな馬鹿でも分かるよう初めに大きく書いておくものだ。
否、初めに書いていても、私の運命は何も変わっていなかっただろう。どうせ私は、義隆に犯されるその時まで、手紙の存在など忘れていたのだから。
兄は、全てを見越している。父もまた、知って私を大内義隆と引き合わせたのだろう。
私が大内義隆から学んだ事、そんなものは一つもない。はっきりしたのは、色欲に溺れる大内家など、どうせすぐに滅びるだろうというありきたりな未来だけだ。
私はまだ、この身に走る痛みを学びだなどと思えるほど老獪ではない。知りながら悪の掌へ投げ出されたのだ、という事実が、ただ悔しく、悲しかった。
私は手紙を丸めて捨てると、敷かれた布団にうずまる。とっくに枯れた涙を再び私に流させているのは、怒りという感情か悲しみという感情か。今はただ、喉が裂けてもまだ泣き続けたい気分だった。