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鮮やかな青
第1章 兄の存在
体中が軋んで、腰が重い。尻が中からひりひりと痛んで、動くのが辛い。近く、小早川家を継ぐために婚礼の儀を行うというのに、この疲れはそれまでに抜ける気がしなかった。
私は足音を立てないようにして、用意された部屋へ戻る。そして、すぐ荷物から一枚の手紙を取り出した。
兄から送られた手紙。おそらくは、大内家へ向かう私を心配して送ったものだろう。受け取ったのが出発する直前で、向かう道すがら読めばいいだろうと思い、そのまま読まずに忘れていた代物だった。
兄の手紙は、たわいもない内容の手紙だった。もう私は一つの家を背負うだけの責任を持っているのに、子どものようにあれこれ心配して書いていた。あれは持ったかとか、この作法を忘れるなとか、まるで子どもへの教本である。挙げ句紙が足りなくなったのか、次第に文字は小さく細くなっていった。
『会えばすぐ分かると思うが、大内様はあの通りのお方だ。元春と違いお前は繊細だから、人一倍辛い想いをするだろう。苦しくて、死んだ方がましかと思うかもしれない。
しかしそんな時こそ、思い出してほしい。大内様は、この荒れた中国の地を、間違いなくその身で乗り切り大身となったお方だ。全ては、未来への知恵に繋がる。学び、知恵を持って毛利に力を尽くしてほしい』