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鮮やかな青
第6章 輝く命
元春兄上も譲らず、父にそっぽを向く。子どもの頃から、いつも喧嘩はそうだった。この二人が大人しく謝って終わった事など、一度もなかった。
父の目線が、ちらちらと私に向かう。自分では収まらないから助けてくれと、目線で訴えられる。これもまた恒例の事で、最後はいつも私が仲裁して決着していた。
「……私は、少し兄様の様子を見てきます。とも、一緒においで」
「お、おい隆景!」
「さあ、とも。久々の兄様、楽しみでしょう。せっかくですから、また遊んでいただきましょうね」
父の悲痛な声は聞かなかった事にして、私はともを連れ立ち上がる。いつもの光景、毛利の風物詩、とはいえ、私もわざわざ神経をすり減らしたくはない。逃げる術があるのなら、撤退するのが賢い将というものだ。
脱出に成功した私とともは、ひとまず蔵へと向かう。どこの蔵かは聞いていないが、茶器の管理をしている蔵などそう多くはない。兄を見つけるのは、そう難しい事ではなかった。
「兄様、お久し振りです」
整理、というか蔵をひっくり返して汚くしていた兄は、腰を上げると振り返る。
「ああ。久し振りだね、隆景」